この記事では、AUD/CAD通貨ペアを対象としたトレーディング戦略を実装したEA「PEACE」のレビューを行います。以下の各セクションで、その性能や特徴を詳しく見ていきましょう。
PEACEについて
PEACEは、多様な投資信託や保険商品で採用されている定期購入型の購入価格平均法(ナンピン)を活用した運用方法を実践します。この方法は、FXの利点を最大限に活かし、FX初心者から経験者まで幅広い投資家が本格的な投資を実現できるように設計されています。ただし、レバレッジを利用する際は注意が必要です。
FXに対して、「マイナスになった時の追証が危険」「難しそうで手が出せない」「自分には関係ない」といったイメージを持っている方に対して、保険投資商品と類似した手法をFXで実現することで、資産運用においてFXも選択肢の一つであることを理解していただけることを目指しています。
EA(エキスパートアドバイザー)を投資ツールとして活用する場合、利用者はEAの特性や特徴、リスクを理解し、それに基づいて適切に利用することで、より質の高い投資を実現できると考えられます。PEACEは、FX初心者でも理解しやすいシンプルなエントリーや決済ロジックを採用しています。
さらに、利用者が独自の購入価格平均化手法を作り出せるように、パラメータ設定を自由に変更できる機能を提供しています。これにより、利用者が納得できる質の高い投資活動を実施することが可能になります。
PEACEは通貨ペアに制限がなく、自由度が高いため、超短期投資から高金利通貨の金利(スワップ)を狙った長期投資まで、多様な投資戦略を実現できる商品として提供されています。
1. パフォーマンス
全期間フォワード結果をもとに、EAのパフォーマンスを評価します。
- 収益: 11,565円
- プロフィットファクター: 2.20
- リスクリターン率: 1.51
- 勝率: 67.61% (48/71)
- 最大ドローダウン: 2.76% (7,637円)
- 収益率(全期間): 4.28%
パフォーマンス指標から見て、このEAは安定した収益を上げる能力があると言えます。勝率が高く、最大ドローダウンも比較的低いことから、リスク管理も適切に行われていると考えられます。
ロジック紹介
PEACEはナンピンをメインロジックとしたEAです。初期設定(推奨通貨ペアAUDCAD/期間2009.1.1-2020.1.1の過去チャートを用いた検証による最適化設定)を例にそのロジックをご紹介致します。
【バージョン1】
- EAを設定後、指数移動平均線(EMA)を用いトレンド方向に新規エントリーを実行します。
- 現在の値が100EMAより上にある場合は買い、下にある場合は売りエントリーをします。
- +10pipsで通常決済しますが、-50pips間隔で初期ロットの1.7倍で再度同方向に追加エントリーを繰り返すことで安い時に多く買い、また高い時に多く売ることで購入価格の平均化ができ、結果的に高い利益率を獲得することができます。
- 従来の手法である総獲得pipsで決済する設定の場合、保有中の数量が大きくなればなるほど、大きく値を戻さないと決済できなくなりますので、指定した金額1,000円(またはドル)で手仕舞い決済する事で「浅い押し目」によって利益を出しつつ手仕舞いできるロジックになっております。
- バージョン2以降のEAをインストールされている場合、バージョン1のセットファイルを読み込ませることで、バージョン1に戻ります。
【バージョン2】
- EA設定後、独自ロジック(ADXをオシレーターとして使用した逆張り手法)によりエントリーを行います。
- 決済ロジックについてはバージョン1と同様になっておりますが、ナンピン間隔は独自の「オートアジャスト機能」によって最適化され実行されます。
- オートアジャスト機能は、ナンピン間隔が固定幅ではなく、保有したポジションの逆方向にトレンドが強い局面では間隔が広くなり、反発局面と判断した場合にナンピンを実行する仕組みになっております。
- また、オートアジャスト機能の感度は簡単に最適化できるため、値動きが大きい通貨ペアに対しては数値を大きくすることで反発局面と判断する感度が低くなり、ナンピン間隔が広くなります。
ロジック解説
ここでは、PEACEのエントリー(新規・追加)、決済(通常・手仕舞い)ロジックを解説いたします。
エントリー
- 移動平均線による判断:指数移動平均線(EMA)を用いて相場の流れに沿ったエントリーをします。現在の値がEMAより上にある時は上昇トレンド、現在の値がEMAより下にある時は下降トレンドと判断して、トレンド方向に新規エントリーします。パラメータ設定のEMA_reverseをtrueにすると、EMAの上にあるときはショート、下にある時はロングポジションを保有します。
- 独自ロジックによる判断(セレクトモード):ADXをオシレーターとして使用した手法です。ADX線(トレンドの強さを表す線)がトレンドを示していない時に、D+やD-が上昇した場合、買われすぎや売られすぎとして判断し逆張りのエントリーを行います。
- エントリー可能時間帯:パラメータ設定にて設定したエントリー時間の範囲で新規エントリーをします。ただしナンピンは指定した時間外でも実行されますが、Out Of Time Nanpinをfalseにすると指定した時間外のナンピンは実行されません。
- 表示しているローソク足による判断:表示させている時間足内での新規エントリーは1回のみとなります。デフォルトはM5ですが自由に変更可能です。
- スプレッドフィルター、スリッページフィルター:急激なスプレッド変動が起こったり、スリッページが広がった場合にエントリーを控える機能です。設定した数値より大きい時、新規エントリーや追加エントリー、決済を行いません。
- 追加エントリー:新規エントリーから指定した回数の範囲で、指定した間隔(pips)毎に、指定した倍率の数量(lot.)で追加エントリーをします。※オートアジャストモード使用時の間隔は指定された幅より狭くはなりません。
決済ロジック
- テイクプロフィット(TP_Pips)による通常決済:指定したpipsに達した場合利確決済をします。例えば10pipsに設定した場合、0.5lot(5万通貨)を保有中の場合+5,000円で決済になります。
- ストップロス(SL_Pips)による通常決済:指定したpipsに達した場合損切決済をします。
- 金額による手仕舞い決済(TP_profitまたはSL_profit):指定した金額(口座通貨の単位、円)に達した場合決済を行います。初期設定では片側で1,000円の含み益になった場合決済します。
※決済ロジックの値を0にした場合、その決済ロジックは適応されません。例えばTP_Pipsに0を入力した場合、pipsによる利確はせず、TP_profitでの利確のみになります。
。
フォワード結果分析
全期間でのフォワード結果
PEACEの全期間でのフォワード結果は以下のとおりです。
項目 | 結果 |
---|---|
収益 | 11,565円 |
プロフィットファクター | 2.20 |
リスクリターン率 | 1.51 |
平均利益 | 453円 |
平均損失 | -431円 |
口座残高 | 1,011,565円 |
収益率(全期間) | 4.28% |
勝率 | 67.61% |
最大保有ポジション数 | 11 |
最大ドローダウン | 2.76% |
最大利益 | 3,029円 |
最大損失 | -959円 |
推奨証拠金 | 270,287円 |
含み収益 | 0円 |
初期額 | 1,000,000円 |
通貨 | 円建て |
フォワード結果を分析すると、全期間の収益は11,565円で、プロフィットファクターは2.20となっています。これは、トレードの利益が損失の2.2倍であることを示しており、ポジティブな結果と言えます。リスクリターン率は1.51で、リスクを考慮したリターンも良好です。
勝率は67.61%で、おおよそ3トレード中2トレードが勝ちトレードであることを示しています。最大ドローダウンは2.76%と低い水準ですので、リスクのコントロールも適切に行われていると言えます。
ただし、収益率は4.28%と比較的低い水準です。全体的には良好な結果と言えますが、収益率を向上させるためにさらなる最適化が必要かもしれません。
直近のフォワード結果を分析
トレード結果の概要
- 通貨ペア: AUD/CAD
- 取引方向: 買い(↗) と 売り(↘)
- 取引数: 26件
- 勝ちトレード数: 15件
- 負けトレード数: 11件
売買ロジックの特徴
- エントリーポイント: 取引は主に特定のタイミングで行われている。特定の時間帯や値動きをもとにエントリーポイントが決定されている可能性がある。
- ストップとリミット: 今回のデータではストップとリミットが設定されていない。リスク管理のためにストップやリミットを設定することを検討することが望ましい。
- 決済: 決済は異なる時間帯で行われており、特定の条件を満たしたときに決済が行われていると考えられる。
勝ちトレードと負けトレードの違い
勝ちトレードでは、損益がプラスになることが多く、最大で2,722円の利益が得られています。一方、負けトレードでは、損益がマイナスになることが多く、最大で-959円の損失が発生しています。勝ちトレードと負けトレードの違いを理解し、戦略を改善することが重要です。
結果の評価
全体として、勝ちトレード数が負けトレード数よりも多いため、戦略は一定の成果を上げています。ただし、リスク管理の面でストップやリミットが設定されていないため、損失額が大きくなるリスクがあります。そのため、ストップやリミットを設定することでリスクを抑える方法を検討することが望ましいです。
また、勝ちトレードと負けトレードの違いを理解し、エントリーや決済のタイミングを改善することで、さらなる収益向上が期待できます。
PEACEのパラメーター
PEACEのパラメーターは以下のとおりです。
パラメーター名 | 説明 | 初期値 |
---|---|---|
MAGIC1 | 買いポジションのマジックナンバー | 7101 |
MAGIC2 | 売りポジションのマジックナンバー | 7102 |
COMMENT | EA操作の識別名 | 21737:PEACE |
Slippage | エントリー時に許容するスリッページ幅(pips) | 1 |
Max_Spread | エントリー時に許容する最大スプレッド幅(pips) | 5 |
Position_Type | 新規エントリーポジションの方向 | Long_Short |
StartTime | 新規エントリーを許可する開始時刻 | 2 |
EndTime | 新規エントリーを許可する終了時刻 | 22 |
Out_of_time_Nanpin | エントリー制限時間外でのナンピンポジションの許可 | false |
Lots | 最初に持つポジションの数量 | 0.01 |
MM | 複利機能のON/OFF | false |
Base_Leverage | 最初のポジションのレバレッジ | 0.1 |
TP_pips | 利確する幅(pips) | 10 |
TP_yen | 利確する金額(口座通貨単位) | 1000 |
SL_pips | 損切する幅(pips) | 0 |
SL_yen | 損切する金額(口座通貨単位) | 0 |
TrailingStop | トレーリングストップの許可 | false |
TrailingStopPoint | トレーリングストップを実行する幅(pips) | 10 |
EMA_reverse | EMAの向きとは逆にポジションを保有するかどうか | false |
EMA_Type | EMAの時間足の設定 | current |
EMA_period | トレンド判断のためのEMA本数 | 0 |
Entry_Type | エントリーのタイミング | select |
Auto_Adjustment | オートアジャストモードの使用 | true |
Adjustment_sensor | オートアジャストモードの感度 | 14 |
Nanpin_interbal_hour | 次のポジションを取るまでの時間 | 3 |
NanpinCount | ナンピンの最大回数 | 10 |
NanpinEntryPips | 追加ポジションの間隔(pips) |
3. 総評
このEAは、AUD/CAD通貨ペアに対して安定した収益性を持つと言えます。特定の時間帯や値動きに基づくエントリーポイントが適切に設定されており、高い勝率を維持しています。また、リスク管理も適切に行われているため、潜在的なリスクも抑えられています。
ただし、EAを利用する際は、市場環境の変化や通貨ペアの特性に注意する必要があります。また、EAの最適化やパラメータ調整が定期的に必要となる場合があるため、適切なメンテナンスも重要です。
全体として、このEAはAUD/CAD通貨ペアに対するトレーディング戦略として優れた性能を発揮しており、適切なリスク管理を行いながら利益を追求するトレーダーにおすすめできます。
このEAに対して5段階評価をすると、以下のようになります。
- 収益性: 4/5 – 全期間の収益率が4.28%と一定の利益を生み出していることから、収益性は良好です。
- リスク管理: 3.5/5 – 最大ドローダウンが2.76%であり、比較的リスクが低いと言えますが、リスクリターン率が1.51とやや低めなので、リスク管理に関しては改善の余地があると言えます。
- 勝率: 4.5/5 – 勝率が67.61%と高いため、短期的なトレードでも成功する可能性が高いと言えます。
- 適応性: 3/5 – 現在はAUD/CAD通貨ペアにのみ適用されており、他の通貨ペアに対する適応性は不明です。また、市場環境の変化に対応するための定期的な最適化が必要とされる可能性があるため、適応性は平均的です。
- 使いやすさ: 4/5 – 基本的な機能や結果が明確であり、使いやすさは高いと言えます。ただし、最適化やパラメータ調整が必要な場合は、トレーダーが一定のスキルを持っていることが望ましいです。
総合評価: 3.8/5 – 全体として、このEAは良好な収益性と高い勝率を持ち、リスク管理にもある程度の配慮がされています。ただし、市場環境の変化に対応するための定期的な最適化が必要であり、使いやすさに関してはトレーダーのスキルに依存する部分があるため、総合評価は3.8となります。
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