最近の相場状況でもパフォーマンスの落ちないEA
最近の相場の動きに合わずに成績を落としているEAが多い中、我が道を行くが如く好調をキープしているEAもあります。
今回紹介する千紫万紅もそんなEAの中の一つです。
千紫万紅はドル円5分足で動くスキャルピングEAで、2年間の疑似フォワードテストをクリアした期待の新人です。2018年8月22日からフォワードを開始しているので新人と言ったら失礼かもしれませんね(笑)
ドル円5分足のスキャルピングと言えば小さな利益をコツコツと積み上げていくロジックで安定したパフォーマンスを発揮するものが多いのですが、千紫万紅はどうなのでしょうか。
【ストラテジーについて】
通貨ペア:ドル円
取引スタイル:スキャルピング、デイトレード
最大ポジション数:2(パラメータ2~10まで変更可能)
運用タイプ:複数枚運用
最大ロット数:40(ブローカーの設定している最大ロット数)
使用時間足:M5
最大ストップロス:90pips
テイクプロフィット:90pips
両建て:なし
最大ストップロス、テイクプロフィットともに90pipsとなっていますが、スキャルピングEAとしてはテイクプロフィットが大きめなのが気になります。しかし実際のトレードではストップロスやテイクプロフィットにかかって決済されることがほとんどないので、テクニカル要件を優先したクローズロジックを採用しているのでしょう。
経験上、テイクプロフィット、ストップロスを重視するEAよりもテクニカルを重視してクローズするEAの方が過剰フィッティングになりづらいような気がしているので、個人的にはこの設定は歓迎できるものです。
開発者によるEAのアピールポイントは以下の4点です。
① 年平均収益率が非常に高い—> 91%
② 最大ドローダウン率が非常に低い—> 4.1%
③ ①と②によりリスクリターン率が高い—> 23
リスクリターン率 = 通算損益(25,946)÷最大ドローダウン(1,140)
④ 疑似フォワードテストにより、ストラテジテスタにより最適化が
カーブフィッティングでないことを確認。
この中で個人的に気になったのが③と④です。
EAを評価する場合にはリスクリーターン率をけっこう気にする方なのですが、千紫万紅のリスクリーターン率は23とかなり高い数値となっています。収益率が高いこととドローダウンが低いことの相乗効果によりこのような素晴らしい数値が実現したのでしょう。低ドローダウンのEAが生み出す安心感はアグレッシブな資金管理をも可能にするのでさらなる収益アップも期待できます。
④の疑似フォワードテストについてはどのEAもやっていると思いますが、千紫万紅の場合は2年間に及ぶ長期間のテストをしているのが目を引きます。10年間のデータを最適化しそこからの2年間を疑似フォワードテスト期間にしていると考えると単なる12年間のバックテストとは重みが違うことに気付くのではないでしょうか。
トレードロジックを探ってみる
千紫万紅のロジックについてEAの販売ページに以下のような記述があります。
■ トレードロジック
4本の移動平均線、ボリバン、ストキャスを利用した
シンプルな押し目買い・戻し売り手法
まずは4本の移動平均線を使っているということからトレンド判定のロジックが搭載されているのではないかと思います。4本の移動平均線すべてがトレンド判定に使われているかはわかりませんが、複数の移動平均線の方向が揃ったときにトレンドが発生したという判断を下している可能性が高いです。
逆に全ての移動平均線の方向感がなく、絡み合っている状態の時にレンジ相場だと判定しレンジトレードを狙うという天邪鬼な使い方もありますが、「シンプルな押し目買い・戻し売り手法」とも書かれていることから千紫万紅では移動平均線をトレンド判定に使用していると見てほぼ間違いないでしょう。
トレンドを判定した上でボリンジャーバンドでの逆張りエントリー、ストキャスティクスは売られすぎ、買われすぎゾーンでのエントリーを防ぐフィルターの役割を担っているのかもしれません。
ソースコードが公開されていない以上ロジックに関しては推論しかできないのですが、オーソドックスなテクニカル指標を使っているところからシンプルで王道的なスキャルピングロジックを採用しているのしょう。
このようなシンプルなロジックを採用した背景には、開発者のカーブフィッティングを極力排除したいという強い想いがあるのでしょうね。
ロジックとは直接関係はありませんが、千紫万紅では最大ポジション数を変更するパラメータを備えています。
MaxPos = 2
デフォルトでは最大ポジション数2という設定になっていますが、この数値を変更することで最大ポジション数を2~10まで自由に設定することが出来ます。資金管理をするにあたってロット数で対応するのか、最大ポジション数で対応するのかはバックテストをした上で判断する必要がありそうです。
千紫万紅をバックテストしてみよう
千紫万紅の特性を知るためにバックテストを実施しました。
全域高性能とまではいきませんがテクニカルクローズタイプのスキャルピングEA特有の収益曲線を描いているのがわかると思います。収益曲線の角度が緩やかなところと急なところがあるので、得意としている相場、苦手な相場がはっきりとしているのかもしれませんね。
さほど大きくないのですがいくつかドローダウンを喫しているポイントがあるようです。
収益曲線が急上昇している箇所ではボラテリティの数値が高いことがわかります。2008年から2009年にかけてのボラティリティが異常に高かった期間にかなり稼ぎまくっています(笑)また2013年、2016年のボラティリティ上昇の際にもハイペースで収益を増やしています。
ドル円相場が上昇しているか下落しているかに関わらず収益が増加していく傾向があるので、単純にボラティリティの上昇が収益の増加に寄与していると考えても良さそうですね。
続いて年毎の獲得pipsを見ていきましょう。
収益曲線どおりで2008、2009、2013、2016年の成績が目立ち過ぎて他の年がしょぼく見えてしまいます(^^;)
アジア時間の動きの激しくない相場を狙ってトレードするためにタイムフィルターを使用しているようです。スプレッドの拡がりやすい時間も含まれているのでブローカー選びが重要になってくるのではないでしょうか。
続いてポジション保有期間と損益の関係を見ていきます。
取引スタイルにスキャルピング~デイトレードと書かれているとおりでほとんどのトレードが1日以内に終了しています。早めに勝負がついた場合の収益性は高く、長引けば長引くほど不利になっていきます。
全トレード数4965に対して90pipsのストップロスにかかったのは僅か14回に過ぎません。またテイクプロフィットにヒットした回数も3回と非常に少ない結果となりました。
このことからもこのEAはストップロス、テイクプロフィットへの依存度が少ないテクニカル主導型のEAだということがわかります。テクニカルクローズを持たずストップロスとテイクプロフィットに決済を委ねるスキャルピングEAと違ってコツコツドカーンになりにくいのでトレーダーにとっては使いやすいEAと言えるのではないでしょうか。
フォワードテストを見てみよう
今年に入ってからのフォワードテストはところどころにドローダウンが観測されますが概ね好調と言ってもいいでしょう。5月中旬に発生したドローダウンからの回復に多少の時間を費やしているようですが、ここ1か月間の成績は順調です。
月ごとの成績は1月のマイナスが目立っていますが、他の月はプラスで推移しているのは評価できるポイントです。
まとめ
ボラティリティの低い状態が続いた場合には急角度で上昇する収益曲線を期待することは不可能でしょう。フォワードテストのような緩やかな上昇カーブを描いていく状況が続くのではないかと思います。低ボラティリティを微益で耐えながら、ボラティリティの上昇を持っているというのが千紫万紅のスタイルなのかもしれません。
一方でテイクプロフィットを遠くに置いたことにより大きな利益が狙えるので、今後ボラティリティが上昇していけば急角度で上昇する収益曲線が描かれるはずです。リーマンショック時のような相場はなかなか来ないと思いますが、それに近い相場になった場合には大きな利益が期待できるのです。
千紫万紅は堅実でありながらも大きな夢を見ることも出来るファンタジーな一面のあるEAなのではないかと思います。堅実に稼ぎつつも、いずれやって来るであろうボラティリティの上昇をワクワクしながら待っているのです(*^^*)
こうした千紫万紅の特性を理解できる人にとってはこのEAは大きな戦力になることでしょう。得意ではない相場でも大きく負けずに耐えられるEAというのは貴重な存在なのです。
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